無線LAN(Wireless LAN)の IEEE 802.11 と Wi‐Fi
IEEE 802.11(アイ・トリプル・イー 802.11)通信規格の種類
空を舞う最新技術と、私たちの日常生活に欠かせない通信インフラ。一見すると接点がないように思える無人航空機(ドローン)と無線LANですが、実はこの2つの技術には深い関わりがあります。近年、ドローンの活用範囲が急速に拡大する中、その操縦や データ転送において無線LAN技術が重要な役割を果たしています。無人航空機の操縦や画像伝送、テレメトリでは実際に無線LANが使用されていないものでも、無線LANが使用しているISMバンドの周波数帯とその周辺の周波数の電波が利用されている場合が多いので、無線LANを学ぶことは、これらの無線技術を理解するうえで大変有用で、より効率的で安全な運用につながるのではないかと思います。この「見えない技術」を味方につけることで、ドローン活用の幅は大きく広がるはずです。無線LANには、どのような技術的進歩があるのかを見ていきたいと思います。
IEEE 802.11(アイ・トリプル・イー 802.11)の「IEEE」
IEEE(アイ・トリプル・イー)は、正式名称を Institute of Electrical and Electronics Engineers(米国電気電子学会または米国電気電子技術者協会)といい、1963年に米国電気学会(AIEE)と無線学会(IRE)が合併して発足しました。本部はアメリカのニューヨークにありますが、名称に「米国」とついているものの、実際は世界中に会員を持つ国際的な学会です。IEEEは通信・電子・情報工学を専門とし、電気、電子工学、コンピューターなどの分野における技術の標準規格を定めています。これらの規格の多くは、ISO(国際標準化機構)により国際標準として採用されており、私たちが日常的に使用するパソコンや通信機器にも適用されています。IEEE の略称は、正式名称の頭文字から取られており、「アイ・トリプル・イー」と発音されます。同学会により標準化された規格の名称は「IEEE」で始まるのが特徴です。具体的な規格の例としては、LAN関連の規格を策定する「IEEE802委員会」があります。この委員会は、Ethernetの「IEEE 802.3」や無線LANの「IEEE 802.11」など、さまざまな重要な通信規格を策定しています。
Wi-Fi(IEEE 802.11)の主な特徴
IEEE 802.11(アイ・トリプル・イー 802.11)の「IEEE」
Wi-Fi(IEEE 802.11)の主な特徴
Wi-Fiの機器はIEEE 802.11の規格をベースにしていますが、IEEE 802.11の世代に対応させるよう、IEEE 802.11の4世代目にあたるIEEE 802.11nをWi-Fi 4、5世代目の IEEE 802.11acをWi-Fi 5のようにWi-Fiでも携帯電話のG4、G5のように世代を表すようになりました。これは、Wi-Fi 4以降で、表すようになり、1、2、3世代のものは、単なる「Wi-Fi」 のままで、世代の表記はありませんでした。
● IEEE 802.11a・IEEE 802.11b
1997年にIEEE 802.11規格が標準化された後、1999年に2.4GHz帯を使用したIEEE 802.11b、5GHz帯を使用したIEEE 802.11aがそれぞれ規格化されました。
IEEE 802.11b(2.4GHz)の通信速度はIEEE 802.11a(5GHz)に劣るものの、11aの対応機器が少なく、5GHz帯の伝播特性のものもあり、障害物にも弱いことから、IEEE 802.11bがより多く利用されました。
● IEEE 802.11g
IEEE 802.11bと互換性を持ちつつ、通信速度を向上した通信規格で、汎用的に使用できる2.4GHzの周波数帯を使用していながら、通信速度は最大54Mbpsまで向上しています。
● IEEE 802.11n(Wi-Fi 4)
IEEE 802.11nは、新技術をもとに通信速度を大きく向上させた通信規格で、主に「MIMO(Multiple Input Multiple Output)」と「チャネルボンディング」と言われる2つの新技術が用いられています。「MIMO」は複数のアンテナを同時に使用することでデータ送受信量を増加させる技術で、「チャネルボンディング」は複数の帯域(チャンネル)を統合して通信速度を向上させる技術で、2つの技術を組み合わせることで高速化を実現しています。
● IEEE 802.11ac(Wi-Fi 5)
最大通信速度は最大6.9Gbpsまで向上しました。「ビームフォーミング」と呼ばれる技術が標準化され、電波干渉を減らし、安定的な通信が可能になりました。
● IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)
通信速度は最大9.6Gbpsと1.4倍に向上しました。理論値の向上自体は飛躍的なものではありませんが、実効速度が大幅に改善しました。多数のユーザーが使用し電波が混み合う環境でも、安定した通信が可能で、スマートフォンやパソコンなどの端末側の消費電力を抑えられるメリットもあります。
スループットは理論上の最大値46Gbit/sに達すると考えられていますが、実際の速度はそれよりはるかに低い通信速度でしか利用できないようです。
世代 | 規格 | 策定時期 | 二次変調方式 | 周波数帯 | 公称最大速度 | 空間ストリーム | チャンネル幅 | 日本国内での運用状況 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | IEEE 802.11 | 1997年6月 | DSSS / FHSS | 2.4 – 2.5 GHz | 2 Mbps | 1 | 22 MHz | 免許不要 |
2 | IEEE 802.11a | 1999年10月 | OFDM | 5.15 – 5.35 GHz | 54 Mbps | 20 MHz | 5.15 – 5.35 GHz: 屋内の利用に限り免許不要 | |
5.47 – 5.725 GHz | 5.47 – 5.725 GHz: 屋内外に限らず免許不要 | |||||||
IEEE 802.11b | DSSS / CCK | 2.4 – 2.5 GHz | 11 Mbps / 22 Mbps | 22 MHz | 免許不要 | |||
3 | IEEE 802.11g | 2003年6月 | OFDM | 54 Mbps | 20 MHz | |||
IEEE 802.11j | 2004年12月 | 4.9 – 5.0 GHz | 要免許、電力など一定制限内の端末のみ免許不要 | |||||
5.03 – 5.091 GHz | ||||||||
4 | IEEE 802.11n | 2009年9月 | 2.4 – 2.5 GHz | 65 Mbps – 600 Mbps | 1 – 4 | 20 / 40 MHz | 製品によって上限の公称速度が異なり、最小では65 Mbps、最大では600 Mbps 2.4 GHz帯: 屋内外に限らず免許不要 | |
5.15 – 5.35 GHz | 5.15 – 5.35 GHz: 屋内の利用に限り免許不要 | |||||||
5.47 – 5.725 GHz | 5.47 – 5.725 GHz: 屋内外に限らず免許不要 | |||||||
5 | IEEE 802.11ac | 2014年1月 | 5.15 – 5.35 GHz | 292.5 Mbps – 6.93 Gbps | 1 – 8 | 80 / 160 MHz | 5.15 – 5.35 GHz: 屋内の利用に限り免許不要 | |
5.47 – 5.725 GHz | 5.47 – 5.725 GHz: 屋内外に限らず免許不要 | |||||||
IEEE 802.11ad | 2013年1月 | シングルキャリア / OFDM | 57 – 66 GHz | 4.6 Gbps – 6.8 Gbps | – | 最大9 GHz | 免許不要 | |
6 | IEEE 802.11ax | 2021年2月 | OFDMA | 2.4 GHz帯 | 9.6 Gbps | 1 – 8 | 20/40/ 80/ 160 MHz | |
5 GHz帯 | ||||||||
6E | 6 GHz帯 | 5.925–6.425 GHz: 2022年9月2日より利用可能 | ||||||
7 | IEEE 802.11be | 2024年12月予定 | OFDMA | 2.4 GHz帯 | 46 Gbps | 1-16 | 20/40/80/160/320 MHz | 6 GHz帯は日本では未割り当て |
5 GHz帯 | ||||||||
6 GHz帯 | ||||||||
8 | IEEE 802.11be | 2028年予定 | 2.4/5/6、42.5GHz 、71GHz | 100 Gbps | 1-16 |
チャネルと周波数
ISMバンドについての詳細は以下にまとめてあります
免許不要の無線局 と ISMバンド(Industrial Scientific and Medical Band)
2.4GHzの範囲で14のチャネルが指定されており、チャネル14の直前の12MHzのスペースを除いて、お互いに5MHz間隔で離れています。
802.11a/n/acは、より厳しく規制されている4.915-5.825 GHzの帯域を使用しています。これらは一般的には「2.4GHzおよび5GHz帯」と呼ばれています。それぞれの周波数帯は、ラジオやTVのチャンネルと放送帯域が細分化されているのと同様に、中心周波数と帯域幅でチャネルに細分化されています。
5.725~5.875 GHz帯の チャネル番号は、国ごとの規制の違いにより直感的ではありません。
ch | F0 (MHz) | DSSS | OFDM | ヨーロッパ | 北米 | 日本 | |||||||||||||||||
周波数 範囲 (MHz) |
チャンネル | 周波数 範囲(MHz) |
チャンネル | 中心周波数 インデックス | |||||||||||||||||||
22 MHz | 20 MHz | 40 MHz | |||||||||||||||||||||
1 | 2412 | 2401–2423 | 1 |
2 |
3 |
— | — | 2402–2422 | 1 | 2 | 3 |
— | 3 |
— | 4 | — | 5 |
— | — | — | 可 | 可 | 可 |
2 | 2417 | 2406–2428 | 4 | 2407–2427 | 4 |
6 | 可 | 可 | 可 | ||||||||||||||
3 | 2422 | 2411–2433 | 5 | 2412–2432 | 5 |
7 |
可 | 可 | 可 | ||||||||||||||
4 | 2427 | 2416–2438 | 6 | 2417–2437 | 6 | 8 |
可 | 可 | 可 | ||||||||||||||
5 | 2432 | 2421–2443 | 7 | 2422–2442 | 7 |
9 | 可 | 可 | 可 | ||||||||||||||
6 | 2437 | 2426–2448 | 8 | 2427–2447 | 8 |
10 |
可 | 可 | 可 | ||||||||||||||
7 | 2442 | 2431–2453 | 9 | 2432–2452 | 9 | 11 |
可 | 可 | 可 | ||||||||||||||
8 | 2447 | 2436–2458 | 10 | 2437–2457 | 10 |
— | 可 | 可 | 可 | ||||||||||||||
9 | 2452 | 2441–2463 | 11 | 2442–2462 | 11 |
— | 可 | 可 | 可 | ||||||||||||||
10 | 2457 | 2446–2468 | 12 | 2447–2467 | 12 |
— | 可 | 可 | 可 | ||||||||||||||
11 | 2462 | 2451–2473 | 13 |
2452–2472 | 13 |
— | 可 | 可 | 可 | ||||||||||||||
12 | 2467 | 2456–2478 | — | 2457–2477 | — | — | 可 | avo ide dB |
可 | ||||||||||||||
13 | 2472 | 2461–2483 | — | 2462–2482 | — | — | 可 | 可 | |||||||||||||||
14 | 2484 | 2473–2495 | 14 | — | 不 可 |
不 可 |
11b のみ |
アメリカでは、チャンネル12と13での802.11の運用は低電力条件下で許可されています。アメリカの2.4 GHz Part 15バンドは、信号の50dB帯域幅が2,400–2,483.5 MHzの範囲内にある限り、スペクトラム拡散運用を許可しており、これはチャンネル1から13を完全に包含しています。連邦通信委員会(FCC)の文書では、チャンネル14のみが禁止されており、低利得アンテナを持つ低電力送信機はチャンネル12と13で合法的に運用できることが明確化されています。しかし、チャンネル12と13は、隣接する制限周波数帯2,483.5–2,500 MHzでの潜在的な干渉を避けるため、通常は使用されません。この帯域は「47 CFR § 15.205」で定められた厳格な放射制限の対象となっています。「FCC命令16-181」によると、「許可されたアクセスポイントデバイスは、Globalstarネットワーク運用センターの管理下で動作している場合にのみ2483.5–2495 MHz帯で動作でき、クライアントデバイスは許可されたアクセスポイントの管理下で動作している場合にのみ2483.5–2495 MHz帯で動作できる」とされています。
2.4 GHz帯におけるチャネル間隔
チャンネル | 中心周波数 | チャンネル幅 | 周波数帯域幅 | 重複チャンネル |
---|---|---|---|---|
1 | 2.412 GHz | 2.401–2.423 GHz | 5 MHz | 2-5 |
2 | 2.417 GHz | 2.406–2.428 GHz | 5 MHz | 1,3-6 |
3 | 2.422 GHz | 2.411–2.433 GHz | 5 MHz | 1–2,4-7 |
4 | 2.427 GHz | 2.416–2.438 GHz | 5 MHz | 1–3,5-8 |
5 | 2.432 GHz | 2.421–2.443 GHz | 5 MHz | 1–4,6-9 |
6 | 2.437 GHz | 2.426–2.448 GHz | 5 MHz | 2–5,7-10 |
7 | 2.442 GHz | 2.431–2.453 GHz | 5 MHz | 3–6,8-11 |
8 | 2.447 GHz | 2.436–2.458 GHz | 5 MHz | 4–7,9-12 |
9 | 2.452 GHz | 2.441–2.463 GHz | 5 MHz | 5–8,10-13 |
10 | 2.457 GHz | 2.446–2.468 GHz | 5 MHz | 6–9,11-13 |
11 | 2.462 GHz | 2.451–2.473 GHz | 5 MHz | 7-10,12-13 |
12 | 2.467 GHz | 2.456–2.478 GHz | 5 MHz | 8-11,13-14 |
13 | 2.472 GHz | 2.461–2.483 GHz | 5 MHz | 9-12, 14 |
14 | 2.484 GHz | 2.473–2.495 GHz | 12 MHz | 12-13 |
無線LAN(Wireless LAN)と Wi-Fi(ワイファイ)
Wi-Fiアライアンス
https://www.wi-fi.org/
Wi-Fiと無線LANの名称の相違点
Wi-Fiの歴史
ほぼ同時期の1991年頃、オランダのNCR社とAT&T社が共同で、レジでの使用を目的とした802.11の前身規格「WaveLAN」を開発しました。
NCR社のVic Hayes氏はIEEE 802.11の議長を10年間務め、ベル研究所のBruce Tuch氏と共に標準化のためIEEEに働きかけました。Hayes氏とTuch氏は、802.11bおよび802.11aという最初のIEEE 802.11規格の設計に深く関わりました。
802.11 プロトコルの最初のバージョンは、1997年にリリースされ、最大2Mビット/秒の接続速度でしたが、1999年に802.11bにアップデートされ、11Mビット/秒のリンク速度が可能になり、人気を博しました。
1999年には、Wi-Fi Allianceが業界団体として設立され、販売されているほとんどの製品がWi-Fi商標を付けるようになりました。
2009年4月、14のテクノロジー企業がオーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)の特許を侵害したとしてCSIROに10億ドルを支払うことに合意しました。オーストラリアはWi-Fiがオーストラリアの発明であると主張し、当時はちょっとした論争になりました。 CSIROは2012年にWi-Fiの特許侵害でさらに2億2000万ドルの和解金を獲得し、米国のグローバル企業はさらに10億ドルと見積もられるロイヤルティをCSIROのライセンス権に支払うよう求められました。 2016年に、CSIRO無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)試作テストベッドはオーストラリア国立博物館で開かれたA History of the World in 100 Objectsへのオーストラリアの貢献として展示されました。
Wi-Fiという名称は、ブランドコンサルティング会社のインターブランドによって1999年8月ごろに商業名として作成されました。
Wi-Fi Allianceはインターブランドに「IEEE 802.11b Direct Sequence」という技術用語よりも覚えやすくキャッチーな名前の作成を依頼しました。インターブランド社が提案した10の候補の中から、Wi-Fiが選ばれたとWi-Fi Alliance設立メンバーのフィル・ベランジェ氏は述べています。このようにWi-Fiというブランド名は、専門的な用語ではなく、一般の人にも親しみやすい名前を意図して命名されたことが分かります。
Wi-Fi Allianceは、ブランド名決定後しばらくの間、「The Standard for Wireless Fidelity」という広告のキャッチコピーを使用していました。Wi-Fi Allianceは時に「Wireless Fidelity Alliance Inc」とも呼ばれていました。
WiFi、Wifi、Wi-Fiなどの表記ゆれがあるものの、Wi-Fi AllianceはWi-Fiのつづり方を正式に認定していません。IEEEはWi-Fiと関連する団体ですが別組織で、IEEEのウェブサイトでは「WiFiはワイヤレスフィデリティ(Wireless Fidelity)の略称」と説明されています。
Trademark Electronic Search System (TESS)
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Wi-Fi 名前の由来
Wi-Fiは "Wireless Fidelity "の略ではない
インターブランドは、「Prozac」「Compaq」「oneworld」「Imation」など、皆さんが耳にしたことがあるようなブランド名を数多く生み出したマーケティング会社です。
「ワイヤレス・フィデリティ」という言葉を耳にするのは、グループの同僚たちが、何の説明もなしに「Wi-Fi」という名称を、使用することを恐れていたからです。彼らは、ブランディングやマーケティングを理解していなかったのです。そこで私たちは妥協し、「The Standard for Wireless Fidelity」というキャッチフレーズを名前と一緒に付けることにしました。しかし、これは間違いであり、人々を混乱させ、ブランドを希薄化させるだけでした。最初の1年ほど(2000年頃)は、このキャッチフレーズが使用されました。その後、Wi-Fiが成功し、大企業のマーケティング担当者やビジネス担当者が役員に就任すると、アライアンスはこのキャッチフレーズを取りやめました。
このキャッチフレーズは、後から考案したものです。インターブランドから提案された10種類の名称の中からWi-Fiという名称を選んだ後です。このキャッチフレーズも、当初の6人の理事が考案したもので、何の意味もない。タグラインを分解してみると、すぐに崩れてしまいます。"標準"?Wi-Fiアライアンスは、常に規格の開発に関与しないよう細心の注意を払っています。Wi-Fiアライアンスは、IEEE 802.11という規格の、相互運用性の認証とブランディングに重点を置いています。標準規格を作成することはありません。IEEEと競合することもありません。IEEEと競合するわけでもなく、彼らの努力を補完するものです。だから、Wi-Fiが標準になることはありえない。そして「Wireless Fidelity」、これは何を意味するのでしょうか?何の意味もありません。「Wi」と「Fi」に合う2つの単語を考え出そうとした不器用な試みでした。それだけです。
と述べられています。
出典:WiFi isn't short for "Wireless Fidelity" | Boing Boing
余談:「Hi-Fi」とは
「Hi‐Fi」は、高忠実度の意味の「High Fidelity」の略で、音響機器で、再生音が原音に近いことを表します。また、原音に忠実に再生する装置を示す場合もあります。1930年代に米国RCAビクター社が、従来のSP録音より遥かに音質のよい『RCA Victor High Fidelity Recording』を発表し、他社に先駆けてハイファイ録音のレコードを売り出しました。当時はコロムビアやポリドールなど、他社も各々『Viva-Tonal Recording』や『Polyfar Recording』など高音質の録音方法を開発し発売していましたが、結局「High Fidelity」という言葉が世間に定着するようになりました。1950年代以降、様々なオーディオメーカーが「原音により忠実」という意味の「ハイ・フィデリティー(High Fidelity)」や「Hi‐Fi」という言葉をマーケティングに使用するようになり、さらに一般にも広まりました。