小型無人機等飛行禁止法の一部改正 [2026年7月14日]
対象空港の飛行禁止区域が「300m」から「1000m」へ ― 小型無人機等飛行禁止法の一部改正と国交省告示第813号を読み解く
2026年7月3日、国土交通省は「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(小型無人機等飛行禁止法)に基づく対象空港の指定を更新する国土交通省告示第813号を公布しました。これにより、新千歳・成田国際・東京国際(羽田)・中部国際・大阪国際(伊丹)・関西国際・福岡・那覇の8空港について、飛行禁止となる周辺地域が従来の「おおむね300m」から「おおむね1000m」へと大幅に拡大されます。適用開始は改正法の施行日である2026年7月14日で、これまで空港指定の根拠だった令和2年国土交通省告示第741号は同日付で廃止されました。
今回の措置は空港単体の話にとどまりません。背景には、2026年6月17日に成立し同年6月24日に公布された「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律の一部を改正する法律」(令和8年法律第47号)による、規制の全国一律の見直しがあります。本稿では告示813号の内容を軸に、法改正の狙いと実務上の変更点を整理します。
1. 発表の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 告示 | 国土交通省告示第813号(令和8年7月3日付) |
| 根拠法 | 小型無人機等飛行禁止法第7条第1項・第2項(令和8年法律第47号による改正後) |
| 対象 | 新千歳・成田国際・東京国際・中部国際・大阪国際・関西国際・福岡・那覇の8空港 |
| 変更内容 | 対象施設周辺地域(イエローゾーン)を「おおむね300m」から「おおむね1000m」に拡大再指定 |
| 廃止された旧告示 | 令和2年国土交通省告示第741号 |
| 適用(施行)日 | 令和8年7月14日 |
2. そもそも小型無人機等飛行禁止法とは
正式名称は「重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律」(平成28年法律第9号)です。航空法とは別建ての規制体系で、機体の重量やカテゴリーにかかわらず、国会議事堂や首相官邸、皇居、原子力事業所、防衛関係施設、そして今回取り上げる空港など「対象施設」の上空での無人機飛行を規制します。
規制範囲は「レッドゾーン」「イエローゾーン」と呼ばれる二層構造になっています。この呼び名は、警察庁などが公開する説明図で対象施設の敷地を赤枠、その周辺地域を黄枠で示していることに由来します。イメージとしては、対象施設を中心とした同心円状の規制区域で、内側の赤い円(レッドゾーン=施設そのもの)ほど規制が厳しく、外側の黄色い円(イエローゾーン=周辺地域)は一定の手続きを踏めば飛行できる、という構造です。今回の改正は、この黄色い円の半径を300mから1000mへ、約3.3倍に広げたものにあたります。半径では3倍強ですが、規制される空域の広さ(面積)で見ると(1000/300)の2乗で約11倍に拡大する計算になり、ドローン運用者が実際に意識すべき範囲はさらに大きく広がったことになります。
レッドゾーン(対象施設の敷地・区域)
- 対象施設そのものの敷地・区域を指します。空港でいえば、滑走路やターミナルを含む空港用地そのものです。
- 原則として、施設の管理者本人またはその同意を得た者以外は飛行させることができません。
- 対象空港や防衛関係施設のレッドゾーンでは、この例外がさらに限定されています。後述する「土地所有者の同意」や「国・地方公共団体の業務」を理由にした飛行であっても、空港・防衛施設のレッドゾーンでは施設管理者の同意がなければ認められません。一般の重要施設(国会議事堂や原子力事業所など)より、規制が一段厳しい扱いになっています。
- 無許可で飛行させた場合や、警察官等の命令に違反した場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となります。
イエローゾーン(対象施設周辺地域)
- レッドゾーンの周囲一定距離の空域です。この「一定距離」が、今回の改正で300mから1000mに拡大されました。
- 次の3つのいずれかに該当する飛行は、イエローゾーンにおける例外として認められます(レッドゾーンでは前述のとおり1のみが有効です)。
- 施設管理者またはその同意を得た者による飛行
- 土地の所有者・占有者(正当な権原を有する者に限る)またはその同意を得た者による、当該土地上空に限った飛行
- 国または地方公共団体が業務として行う飛行
- 上記の例外に該当する場合でも、原則として都道府県公安委員会(および海域を含む場合は管区海上保安部長)への事前通報が必要です。
- 2026年7月14日の改正施行後は、①〜③のいずれの同意も得ていない飛行はもちろん、たとえ同意を得ていても事前通報を怠って飛行させた場合も、6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になり得ます(後述する「直罰化」)。
空港が対象施設に加わったのは2020年6月の法改正がきっかけで、同年7月に8空港が指定され、周囲おおむね300mが飛行禁止のイエローゾーンとされてきました。今回の告示813号は、この8空港の指定自体を維持しつつ、周辺地域の範囲だけを1000mに引き直したものにあたります。
3. なぜ「300m」だったのか、なぜ今「1000m」なのか
300mという数字には理由がありました。警察庁の説明によれば、法制定当時(2016年)に市販されていたドローンの映像伝送距離は市街地で概ね200~300m程度だったため、レッドゾーンに向けて機体を飛ばす操縦者はイエローゾーンの境界から300m以内にいる可能性が高いという前提がありました。つまり、警察官がイエローゾーン内を捜索すれば操縦者を発見し、退去命令などの措置を取れるという設計だったわけです。
ところがドローンの映像伝送・操縦技術はこの10年で大きく進化し、イエローゾーンの外側からでも十分にレッドゾーン上空へ機体を侵入させられるようになりました。結果として、警察官が操縦者を捜索・発見すること自体が難しくなり、実効性の低下が課題として指摘されるようになっていました。これが、令和8年法律第47号によってイエローゾーンの範囲を1000mへ広げた最大の理由です。
なお法改正の国会審議では、衆参内閣委員会の附帯決議を踏まえ、同意取得手続・通報手続の円滑化や広報啓発活動の推進にも取り組むこととされており、規制強化と同時に手続き面の負担軽減も課題として位置づけられています。
4. もう一つの大きな変更点:イエローゾーンの「直罰化」
範囲拡大と並んで実務上インパクトが大きいのが罰則の見直しです。
| 区分 | 改正前 | 改正後(令和8年7月14日~) |
|---|---|---|
| レッドゾーンでの無断飛行/警察官等の命令違反 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 | 同左(変更なし) |
| イエローゾーンでの飛行そのもの(同意や事前通報を欠く場合を含む) | 罰則なし(退去命令に従わなかった場合のみ処罰) | 新設:6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
改正前は、イエローゾーンを無許可で飛行しても、警察官等から退去命令を受け、それに従わなかった場合に初めて処罰の対象となる仕組みでした。改正後は、事前の同意取得や通報などの手続きを経ずに飛行した時点で、命令の有無にかかわらず処罰対象になり得ます。範囲拡大とあわせて、対象空港周辺でドローンを運用する際の手続き遵守がこれまで以上に重要になったといえます。
なお、重量100g未満のいわゆるトイドローンも、航空法上の規制対象からは外れる場合がありますが、小型無人機等飛行禁止法では重量・大きさを問わず規制対象となる点は従来通り変わりません。
5. 対象8空港と所在地
| 空港 | 主な所在地 |
|---|---|
| 新千歳空港 | 北海道千歳市・苫小牧市 |
| 成田国際空港 | 千葉県成田市・香取郡多古町・山武郡芝山町 |
| 東京国際空港(羽田) | 東京都大田区 |
| 中部国際空港 | 愛知県常滑市 |
| 大阪国際空港(伊丹) | 大阪府池田市・豊中市、兵庫県伊丹市 |
| 関西国際空港 | 大阪府泉佐野市・泉南市・泉南郡田尻町 |
| 福岡空港 | 福岡県福岡市 |
| 那覇空港 | 沖縄県那覇市・豊見城市 |
告示813号では、各空港について「対象空港の敷地又は区域」(レッドゾーン)と「対象施設周辺地域」(イエローゾーン)を、行政区画(町丁目)単位、または該当区域が海域にかかる場合は緯度・経度の座標点を結んだ線によって具体的に定義しています。羽田・中部・関西・那覇の4空港は地先水面(海域)を含むため、境界の一部が座標指定となっており、これらの空港周辺で飛行させる場合は都道府県公安委員会に加えて管区海上保安部長への事前通報も必要になります。具体的な境界線は、国土交通省が備え置く図面および国土地理院の「地理院地図」で確認できます。
6. ドローン運用者・空撮事業者が確認すべきこと
対象空港周辺で業務・趣味を問わずドローンを飛行させる予定がある場合、以下を確認しておきましょう。
- 飛行予定地点がイエローゾーン(概ね1000m以内)に入っていないかを、地理院地図などで事前に確認します。
- 空港管理者の同意を得ます。対象空港の敷地・区域(レッドゾーン)上空を飛ばす場合は、管理者本人またはその同意を得た者以外は原則飛行できません。
- 都道府県公安委員会(警察)への事前通報を、飛行開始の48時間前までに行います(災害等のやむを得ない場合を除く)。通報は書面のほか、e-Gov電子申請サービスからオンラインで提出することもできます。羽田空港(警視庁・神奈川県警察)や大阪国際空港(大阪府警察・兵庫県警察)のように周辺地域が複数の都道府県公安委員会にまたがる場合は、それぞれへの通報が必要です。
- 羽田・中部国際・関西国際・那覇の4空港(内陸空港である大阪国際空港は該当しません)は地先水面を含むため、これらの空港周辺で飛行させる場合は管区海上保安部長への通報も忘れずに行います。
- 航空法の許可・承認を得ていても、この法律に基づく同意・通報は別途必要という点に注意しましょう。二つの法律は独立した規制であり、一方の手続きが他方を代替することはありません。
7. まとめ
今回の告示813号は、単独の制度変更ではなく、令和8年法律第47号による小型無人機等飛行禁止法の全国的な見直し(イエローゾーンの1000mへの拡大、直罰化、対象施設カテゴリーの追加など)の一環として、8つの対象空港に具体的な区域を当てはめたものです。ドローンの性能向上という「技術の進化」が規制強化の直接的な引き金になった点は、今後の無人機政策を追ううえでも押さえておきたいポイントといえるでしょう。空港周辺での飛行を計画する際は、施行日(令和8年7月14日)以降、新しい1000mの区域と直罰化された罰則の双方を踏まえた手続きが必須となります。
出典・参考リンク
- 国土交通省告示第813号(令和8年7月3日付、令和8年7月14日適用)
- 国土交通省「小型無人機等飛行禁止法に基づき小型無人機等の飛行が禁止される空港の指定」https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk2_000023.html
- 警察庁「小型無人機等飛行禁止法関係」https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/index.html
- 警察庁「小型無人機等飛行禁止法に関する警察からのお知らせ」https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/kouhou.html
- リーフレット(警察庁)https://www.npa.go.jp/bureau/security/kogatamujinki/pdf/r8_poster.pdf
本記事は2026年7月30日時点で確認できる公表資料に基づいて作成しています。区域の詳細な境界や最新の手続き方法は、必ず国土交通省・警察庁など公式サイトの図面・通達でご確認ください。