無人航空機の飛行の安全に関する教則:第3版と第4版の改訂分析
無人航空機の飛行の安全に関する教則:第3版(令和5年4月13日)と第4版(令和7年2月1日)の包括的改訂分析
はじめに
主要改訂点の概要
- 捜索又は救助のための特例適用の明確化(第3章 3.1.2(2)3))
- 第三者及び第三者上空の定義の見直し(第3章 3.1.2(2)4)a(1)(2))
- レベル 3.5 飛行の追記(第3章 3.1.2(2)4)c))
- 行政処分等基準の追記(第3章 3.1.2(3)5))
- 無線局免許手続規則の一部改正の内容反映(第3章 3.2.2(1)(4))
- その他表現の見直し
詳細な改訂分析:一言一句比較
1. 第3章 3.1.2(2)3) 捜索又は救助のための特例適用の明確化
変更点の詳細分析:
- 特例適用の主体の明確化: 旧版の「これらから依頼を受けた者」が、新版では「これらの者の依頼により捜索又は救助を行う者」とより具体的に変更されました。この修正は、単に依頼を受けたという事実だけでなく、実際に「捜索又は救助を行う」という行為に特例の適用を限定する意図が明確に示されています。これにより、特例の対象となる事業者の範囲がより厳密に定義されたと解釈できます。
- 「捜索又は救助」の定義の拡張と具体例の追加: 最も重要な変更点として、新版では「捜索又は救助」の具体的な定義が追記されました。この定義には、「人命や財産に急迫した危難を回避するための措置」全般が含まれるとされ、大規模災害時における医薬品等の輸送、危険箇所の調査・点検、さらには住民避難後の地域の防犯対策のための飛行までが特例の対象に含まれることが明記されました。この拡張は、災害現場でのドローンの多様な活用ニーズに対応するための規制当局の適応を示しています。これは、ドローンが単なる捜索・救助ツールに留まらず、広範な災害対応活動における不可欠なインフラとして認識されつつあることを意味します。この変更は、規制当局が実運用から得られた知見に基づき、ドローンの社会貢献性を最大限に引き出すための規制の柔軟化を図っていることを示唆しています。
- 関連文書への参照の追加: 新版では、特例の具体的な解釈や適用事例が、国土交通省の通達やガイドライン、ウェブサイトで提供されていることが明記されました。これは、教則という基本文書では網羅しきれない詳細な運用指針を、より柔軟かつ迅速に更新可能な外部文書で補完するという規制当局の戦略を示しています。このアプローチは、規制の迅速な更新を可能にする一方で、運用者は常に最新の情報を確認する必要があり、コンプライアンス管理の複雑性が増す可能性があります。特に、法務担当者やコンプライアンス責任者は、教則本体だけでなく、参照される外部文書の動向にも注意を払う必要があります。
2. 第3章 3.1.2(2)4)a(1)(2) 第三者及び第三者上空の定義の見直し
変更点の詳細分析:
- 「直接的」・「間接的」の厳密化: 旧版の「直接又は間接的に関与していない者」に対し、新版では「直接的又は間接的に関与していない者」と「的」が追加され、より厳密な表現になりました。これは、法的な解釈において曖昧さを排除し、定義の明確性を高めるための修正です。
- 間接関与者の定義の深化: 間接関与者の定義に「飛行目的について操縦者と共通の認識を持ち」という条件が追加されたことは、単なる現場での存在だけでなく、ドローン飛行の目的への意識的な関与が「第三者ではない」と判断されるための要件となったことを意味します。これにより、例えば単に飛行現場に居合わせただけの者は「間接関与者」とはみなされず、「第三者」として扱われる可能性が高まり、運航者はより厳格な立入管理措置を講じる必要が生じます。具体例として、映画の空撮における俳優やスタッフ、学校での人文字の生徒が挙げられたことで、実務上の判断基準が明確になりました。
- 「第三者上空」の新規定義とその影響: 最も画期的な変更は、旧版には存在しなかった「第三者上空」という概念が新たに定義されたことです。これは、これまで「第三者との距離30メートル未満」という基準で間接的に扱われていた「第三者の上空を飛行する」行為に対し、直接的な法的定義を与えたものです。特に、「上空」が単なる直上だけでなく、「無人航空機の落下距離(飛行範囲の外周から製造者等が保証した落下距離)を踏まえ、当該無人航空機が落下する可能性のある領域」を含むと定義された点は極めて重要です。これは、無人航空機の飛行計画において、機体の性能(落下特性)を考慮したリスク評価が必須となり、安全マージンの設定がより科学的かつ厳密に求められることを意味します。この変更は、将来的に有人地帯での飛行(レベル4)を可能にするための、リスク評価の基礎を固めるものと解釈できます。
- 第三者上空とみなされない例外の導入:
- 「第三者」が屋内や移動中のものを除く車両等の内部など、遮蔽物に覆われ保護されている場合は「第三者上空」とみなされません。これは、ドローンの落下による直接的な被害リスクが低い状況を考慮した合理的な例外規定です。
- 「レベル 3.5 飛行」の要件を満たし、移動中の車両等の上空を一時的に横断する場合も「第三者上空」とみなされません。この例外は、後述のレベル 3.5 飛行の導入と密接に連携しており、特定の条件下での高度なドローン運用を可能にするための重要な法的基盤となります。
- 注意喚起の追加: 「第三者」が遮蔽物に覆われず、無人航空機の衝突から保護されていない状況になった場合には、直ちに「第三者上空」とみなされる旨の注意喚起が追加されました。これは、運航者が常に現場の状況を監視し、変化に応じて迅速に対応する義務があることを強調しています。
3. 第3章 3.1.2(2)4)c) レベル 3.5 飛行の追記
- カテゴリーⅡ飛行(レベル3): 補助者や周知看板を配置する等の立入管理措置を講じ、飛行経路下が無人地帯であることを確認し飛行する。
- カテゴリーⅢ飛行(レベル4): 飛行経路下において、立入管理措置を講じず、有人地帯で飛行する。
- カテゴリーⅡ飛行(レベル3.5): 機体に搭載したカメラによって、飛行経路下に歩行者等がいない無人地帯であることを確認し飛行する。 「そのため、レベル 3.5 飛行は以下の点について注意する必要がある。」 「● 一定の要件を満たすことにより、一時的な道路等の横断に限って移動中の車両等の上空を飛行することを可能とするものであり、カテゴリーⅢ(レベル4)飛行と同様に歩行者等の第三者の上空の飛行を認めるものではない。」 「● 一定の要件を満たすことにより、従来求められていた立入管理措置のうち補助者の配置や看板の設置等を機上カメラでの確認に代替するものであり、立入管理措置そのものが不要となるわけではない。」 「(2) レベル 3.5 飛行の実施に求められる安全確保体制等」 「レベル 3.5 飛行の実施に当たっては、特に下記 3 つの要件への適合が必要である。」 「● 機上カメラと地上に設置するモニター等の設備により、進行方向の飛行経路の直下及びその周辺に第三者の立入りが無いことを確認できることを事前に確認していること」 「● 操縦者が無人航空機操縦者技能証明(飛行させる無人航空機の種類、重量に対応したものであって、目視内飛行の限定解除を受けたもの)を保有していること」 「● 移動中の車両等との接触や交通障害等の不測の事態に備え、十分な補償が可能な第三者賠償責任保険に加入していること」 「また、レベル 3.5 飛行の実施に際し、レベル3飛行に必要な要件へ適合していることを示す以下の資料の作成が必要である。また、飛行の安全を確保するための運航条件等を事前に定める必要がある。」 「● 飛行に際し想定されるリスクを十分に考慮の上、安全な飛行が可能となる運航条件等を設定した資料」 「● 無人航空機の機能・性能及び飛行形態に応じた追加基準に関する基準適合状況を示せる資料」 「● 操縦者にかかる飛行形態に応じた追加基準への適合性について、過去の飛行実績又は訓練実績等を記載した資料」 「● 飛行範囲及びその外周から製造者等が保証した落下距離の範囲内を立入管理区画として地図上に示した資料」 「● 想定される運用により、十分な飛行実績(機体の初期故障期間を超えたもの)を有することを示せる資料」 「なお、上記資料は基本的に申請時の提出は不要であるが、別途、国土交通省航空局から求めがあった場合には提出が必要となる。」
変更点の詳細分析:
- 新たな飛行区分「レベル 3.5 飛行」の創設: 旧版には存在しなかった「レベル 3.5 飛行」が新設されたことは、無人航空機運用の規制緩和と技術革新の進展を示す最も重要な点です。この飛行は、従来のレベル 3 飛行(無人地帯での目視外飛行)で求められていた補助者の配置や看板設置といった人的・物理的立入管理措置を、機上カメラによるリアルタイム監視というデジタル技術で代替することを可能にします。これは、規制当局が技術の進歩を積極的に取り入れ、運用の効率化を図りつつも、公共の安全を確保するために厳格な要件を課すという、リスクベースアプローチの成熟を示しています。
- 運用の効率化とリスク管理のバランス: レベル 3.5 飛行は、特に移動中の車両等の上空を一時的に横断するような、これまで困難であった運用を可能にします。これは、インフラ点検や物流など、道路や線路を横断せざるを得ない場面でのドローン活用を大幅に促進するものです。この規制緩和は、特定の高価値な運用を可能にする一方で、安全確保のために厳格な要件(機上カメラによる確認、特定の操縦者技能証明、十分な賠償責任保険)を課すことで、公共の安全を維持しようとする規制当局の意図が読み取れます。
- カテゴリーⅡ飛行への位置づけと厳格な要件: レベル 3.5 飛行がカテゴリーⅡ飛行(無人地帯での飛行)に分類される点が重要です。これは、歩行者等の第三者上空での飛行を原則禁止するカテゴリーⅢ飛行とは一線を画しており、あくまで「無人地帯であることを機上カメラで確認」する代替措置であるという位置づけです。しかし、その実施には、機上カメラと地上モニターによる飛行経路直下および周辺の第三者不在の事前確認、目視内飛行の限定解除を受けた無人航空機操縦者技能証明、そして移動中の車両等との接触リスクに備えた「十分な補償が可能な第三者賠償責任保険」への加入が必須となります。特に保険要件の厳格化は、技術的対策だけではカバーしきれない残存リスクに対する財務的担保を求める規制当局の姿勢を明確に示しています。これは、技術的進歩が新たな運用を可能にする一方で、それに伴う新たなリスクに対しては、財務的な責任を強化することでバランスを取るという規制戦略を示唆しています。
- 必要な資料作成と提出義務: 飛行の安全を確保するための運航条件設定資料、機体機能・性能に関する追加基準適合状況資料、操縦者の飛行実績・訓練実績資料、立入管理区画の地図資料、十分な飛行実績を示す資料の作成が求められます。これらの資料は申請時の提出は不要ですが、国土交通省航空局から求めがあった場合には提出義務が生じるため、運航者は常にこれらの資料を整備しておく必要があります。
特定飛行の飛行形態の分類(カテゴリーとレベル)比較表
飛行形態 | 旧版の定義 | 新版の定義 | 立入管理措置 | 操縦者技能証明 | 機体認証 | 保険要件 | 主な特徴/留意点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
カテゴリーⅠ飛行 | 特定飛行に該当しない飛行 | 特定飛行に該当しない飛行(レベル1:目視内での操縦飛行、レベル2:目視内での自動・自律飛行) | 不 要 | 不 要 | 不 要 | 推奨 (任意) | 航空法上の手続きは不要。 |
カテゴリーⅡ飛行 | 特定飛行のうち、第三者の立入管理措置を講じたうえで行うもの。リスクの高いものは「カテゴリーⅡA飛行」、その他は「カテゴリーⅡB飛行」。 | 特定飛行のうち、第三者の立入管理措置を講じたうえで行うもの(レベル3:無人地帯での目視外飛行)。リスクの高いものは「カテゴリーⅡA飛行」、その他は「カテゴリーⅡB飛行」。 | 必須(補助者、看板等)または機上カメラによる代替(レベル3.5) | 必須(二等無人航空機操縦士)または許可・承認 | 必須(第二種機体認証)または許可・承認 推奨(任意) | レベル3.5飛行では十分な補償が可能な第三者賠償責任保険が必須 | 特定飛行だが立入管理で安全確保。 レベル3.5は技術代替。 |
カテゴリーⅢ飛行 | 特定飛行のうち立入管理措置を講じないで行うもの(第三者上空における特定飛行)。 | 特定飛行のうち立入管理措置を講じないで行うもの、すなわち第三者上空における特定飛行(レベル4:有人地帯での目視外飛行)。 | なし | 必須(一等無人航空機操縦士) | 必須(第一種機体認証) | 推奨 (任意) | 最もリスクが高く、最も厳格な手続きが必要。 |
4. 第3章 3.1.2(3)5) 行政処分等基準の追記
「航空法(昭和27年法律第231号)への違反や無人航空機を飛行させるに当たり非行又は重大な過失があった場合には、次のような行政処分の対象となる。」
「① 技能証明の取消し」
「② 技能証明の効力停止(期間は1年以内)」
新版の記述 :
「事故を起こしたときに操縦者が負う法的責任」のセクションに「(3)行政処分等」が追加され、旧版の記述がより詳細化。
「航空法(昭和27年法律第231号)への違反や無人航空機を飛行させるに当たり非行又は重大な過失があった場合には、次のような行政処分等の対象となる。」
「① 技能証明の効力の取消」(「取消し」から「効力の取消」へ変更)
「② 技能証明の効力の停止(期間は1年、6月、3月のいずれか)」(期間が具体化)
「③ 文書警告」(新規追加)
「④ 口頭注意」(新規追加)
新版の記述 :
「5)行政処分等」(新規セクションとして詳細追記)
「技能証明を有する者が、「無人航空機操縦者技能証明に係る行政処分に関する基準」に定める処分事由に該当する行為を行った場合、処分事由に応じて技能証明の効力の取消や停止等の行政処分又は行政指導が行われる。」
「同基準では点数制を採用しており、技能証明に係る行政処分及び行政指導の内容は、「点数表」に掲げる処分事由に対応する点数を基本として、個別事情や過去に処分を受けているかの有無を勘案して点数の加重又は軽減を行い、当該処分事由についての点数を決定したうえで、「処分等区分表」によって決定される。」
変更点の詳細分析:
- 行政処分の段階化と明確化: 旧版では「取消し」と「効力停止(1年以内)」という大まかな区分であった行政処分が、新版では「効力の取消」「効力の停止(1年、6月、3月)」「文書警告」「口頭注意」と、より多段階に細分化されました¹。この変更は、違反行為の軽重に応じた柔軟な対応を可能にし、処分の透明性と公平性を高めることを目的としています。これは、規制当局が、単なる罰則の適用だけでなく、違反の程度に応じたきめ細やかな指導を通じて、運航者のコンプライアンス意識を段階的に向上させようとしていることを示唆しています。
- 「点数制」の導入: 最も重要な変更点として、違反行為ごとに点数を付与し、その合計点数に基づいて処分内容を決定する「点数制」が新たに導入されました¹。この点数制は、各処分事由に具体的な点数を割り当てる「点数表」、合計点数と処分内容を対応させる「処分等区分表」、個別事情や過去の処分歴を点数に反映させる「個別事情による加減表」および「過去に処分等を受けている場合の取扱表」から構成されます。このシステムは、処分の客観性を大幅に向上させ、運航者に対して、どのような違反行為がどの程度の処分につながるかを明確に示しています。これは、規制遵守を促す上で極めて有効な手段であり、運航者は自身の行動がもたらす法的リスクをより具体的に評価できるようになります。
- 早期介入と再犯防止の意図: 「口頭注意」や「文書警告」といった比較的軽微な行政指導が追加されたことは、規制当局が、より深刻な違反に至る前に、軽微な過失に対して早期に介入し、運航者の行動変容を促す意図があることを示唆しています¹。これにより、運航者は自身のコンプライアンス状況をより早期に認識し、改善措置を講じる機会を得ることができます。同時に、過去の処分歴が点数に加重される仕組みは、常習的な違反者に対する厳格な対応を可能にし、再犯防止への強い姿勢を示しています。これは、法的な強制力だけでなく、教育的・指導的な側面も重視する規制アプローチへの転換を示しています。
行政処分等基準比較表
区 分 | 旧版の処分内容 | 新版の点数 | 新版の処分内容 | 個別事情による加減 | 過去の処分歴による加重 |
---|---|---|---|---|---|
処分事由の例 | |||||
事故発生時の危険防止措置不履行 | 技能証明の取消し/効力停止 | 15点 | 技能証明の 効力の取消 | 重大な悪意/害意 (+3点) やむを得ない事情 (-1~3点) 第三者の負傷 (+1~3点) 常習性 (+3点) 自主的解消/申出 (-1~3点) 社会的影響 (+1~3点) | 口頭注意/文書警告歴 (+2~4点) 効力停止歴 (+4~6点) 取消歴 (取消) |
アルコール・薬物の影響下での飛行 | 技能証明の取消し/効力停止 | 15点 | 技能証明の効力の取消 | 同 上 | 同 上 |
飛行計画の変更指示不遵守 | 技能証明の取消し/効力停止 | 15点 | 技能証明の効力の取消 | 同 上 | 同 上 |
飛行禁止空域での飛行等 | 技能証明の取消し/効力停止 | 11点 | 技能証明の効力の停止6月 | 同 上 | 同 上 |
飛行計画を通報しない特定飛行 | 技能証明の取消し/効力停止 | 10点 | 技能証明の効力の停止6月 | 同 上 | 同 上 |
技能証明書不携帯での特定飛行 | 技能証明の取消し/効力停止 | 1点 | 口頭注意 | 同 上 | 同 上 |
処分内容の段階 | |||||
1~2点 | ー | 1~2点 | 口頭注意 | ー | ー |
3~5点 | ー | 3~5点 | 文書警告 | ー | ー |
6~8点 | 効力停止(期間は1年以内) | 6~8点 | 技能証明の効力の停止3月 | ー | ー |
9~11点 | 効力停止(期間は1年以内) | 9~11点 | 技能証明の効力の停止6月 | ー | ー |
12~14点 | 効力停止(期間は1年以内) | 12~14点 | 技能証明の効力の停止1年 | ー | ー |
15点~ | 技能証明の取消し | 15点~ | 技能証明の効力の取消 | ー | ー |
5. 第3章 3.2.2(1)(4) 無線局免許手続規則の一部改正の内容反映
「(1) 制度概要及び無人航空機に用いられる無線設備」の表に「携帯局(無人移動体画像伝送システムの無線局)」の項目のみ記載。
「(4)携帯電話等を上空で利用する場合」のセクションでは、「実用化試験局の免許を受ける、又は、高度 150m 未満において一定の条件下で利用することで、既設の無線局等の運用等に支障を与えないことを条件に、携帯電話等を無人航空機に搭載して利用できるよう、制度を整備しています。詳細は総務省電波利用ホームページを確認すること。」と記載。
「(1) 制度概要及び無人航空機に用いられる無線設備」の表に、新たに「陸上移動局(携帯電話(4G、5G))」の分類が追加された。この新しい分類には、無線局免許が「不要」であり、周波数帯として「800MHz帯 900MHz帯 1.7GHz帯 2GHz帯」が示され、主な利用形態は「操縦用、画像伝送用、データ伝送用」であり、無線従事者資格も「不要」とされている。また、注釈として、「携帯電話事業者の包括免許により運用」「上空利用が可能な周波数帯のみ掲載」「基地局によって制御される」といった詳細が追記された。
「(4)携帯電話」のセクションでは、タイトルが「携帯電話等を上空で利用する場合」から「携帯電話」へと簡略化された。内容も「携帯電話等の移動通信システムは、地上での利用を前提に設計されていることから、上空で利用した場合、通信品質の安定性や地上の携帯電話等の利用への影響が懸念される。こうした状況を踏まえ、一定の条件下で利用することで、既設の無線局の運用等に支障を与えずに上空で利用できるよう、制度整備がなされている。携帯電話を無人航空機に搭載して利用する場合(無人航空機に SIM カードを挿入して利用する場合を含む)には、携帯電話事業者が提供する条件に対応した上空用プラン等の利用手続を行うことが必要である。詳細は総務省電波利用ホームページを確認すること。」と変更された。
変更点の詳細分析:
- 携帯電話ネットワークの正式な利用経路の確立: 最も重要な変更点は、4G/5G携帯電話ネットワークが、無人航空機の主要な無線通信システムとして正式に位置づけられ、その利用が「陸上移動局」という新たな分類で明示されたことです。旧版では、携帯電話の上空利用は「実用化試験局の免許」が必要な実験的な段階でしたが、新版では「携帯電話事業者の包括免許により運用」される通常の運用形態として認められました。これは、ドローンの長距離・目視外飛行において、従来の無線通信の制約を克服し、より広範なエリアでの運用を可能にする技術的・規制的な大きな進展を意味します。この変更は、無人航空機が既存の通信インフラに統合され、より大規模な商業運用へと移行する道を開くものです。
- 「上空用プラン」の義務化: 携帯電話をドローンに搭載して利用する際に、携帯電話事業者が提供する「上空用プラン等の利用手続」が必要であることが明確化されました¹。これは、地上利用を前提とした携帯電話ネットワークが、上空での利用によって発生する可能性のある通信品質への影響や地上局への干渉といった課題に対応するための措置です。この要件は、通信インフラ事業者とドローン運航者の間の連携を強化し、安全かつ安定した通信環境を確保することを目的としています。これにより、ドローン運航者は、通信事業者との契約において、ドローン運用に適した特別なプランを選択する必要があることが明確になりました。
- SIMカード利用の明示: 「無人航空機に SIM カードを挿入して利用する場合を含む」という記述の追加は、携帯電話ネットワークを利用したドローンが、スマートフォンと同様にSIMカードを介して通信を行うことを明確に示しており、技術的な理解を深める上で有用です。
主な無線通信システム比較表
分 類 | 無線局免許 | 周波数帯 | 最大送信出力 | 主な利用形態 | 無線従事者資格 | 旧版の有無 | 新版の有無 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
飛行免許又は登録を要しない無線局 | 不 要 | 73MHz帯等 | 微弱※1 | 操縦用 | 不 要 | 有り | 有り |
不要※2 | 920MHz帯 | 20mW | 操縦用 | 不 要 | 有り | 有り | |
不要※2 | 2.4GHz帯 | 10mW/MHz※3 | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 不 要 | 有り | 有り | |
携帯局(無人移動体画像伝送システムの無線局) | 要※4 | 169MHz帯 | 10mW※5 | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 第三級陸上特殊無線技士以上の資格 | 有り | 有り |
要※4 | 2.4GHz帯 | 1W | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 第三級陸上特殊無線技士以上の資格 | 有り | 有り | |
要※4 | 5.7GHz帯 | 1W | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 第三級陸上特殊無線技士以上の資格 | 有り | 有り | |
陸上移動局(携帯電話(4G、5G)) | 不要※6 | 800MHz帯, 900MHz帯, 1.7GHz帯, 2GHz帯※7 | ※8 | 操縦用、画像伝送用、データ伝送用 | 不 要 | な し | 新規追加 |
6. その他表現の見直し
- 2.1.5 無理をしない
旧版の「無理をしない。」が新版では「無理をしないこと。」に変更されました。文末に「こと」が追加されたことで、単なる助言から、より遵守すべき行動規範としての指示性が強調されました。これは、操縦者の安全意識を一層高めるための表現の強化と解釈できます。
- 2.2.1 飛行計画の作成・現地調査 (1) 飛行計画の作成
旧版の「近くを飛行するとき」が新版では「近所を飛行するとき」に変更されました。意味合いに大きな変化はありませんが、より日常的で親しみやすい言葉遣いへの修正であり、教則の読者層への配慮がうかがえます。
- 2.2.4 地域情報の収集
旧版の記述に、新版では「緊急用務空域や飛行自粛要請空域の情報も含め」という文言と、その詳細が記載されている章節(3.1.2 (2)1)b.緊急用務空域、3.2.4飛行自粛要請空域)への参照が追記されました。これは、運航者が飛行前に確認すべき地域情報として、これらの特殊空域の情報を明示的に含めるよう義務づけるものであり、安全確保のための事前確認の範囲が拡大されたことを意味します。
- 2.3.1 事故を起こしたら
新版では、機体が墜落した場合の措置として、「プロペラがまだ回転している場合は不用意に機体に接近せず十分に注意する」という具体的な注意喚起が追記されました。これは、実際の事故現場での二次被害防止の観点から、より実践的な安全対策を促すための重要な追加です。
- 2.3.3 保険
新版では、「カテゴリーⅡ飛行のうち一部の飛行(3.1.2(2)4)c.レベル 3.5 飛行を参照)にあたっては、不測の事態が発生した場合に十分な補償が可能な第三者賠償責任保険に加入していることが求められる」という記述が追記されました。これは、新たに導入されたレベル3.5飛行におけるリスクの特殊性を踏まえ、その運用にはより強固な財務的担保が必要であることを明確にしたものです。 - 3.1.1 航空法に関する一般知識 (2) 無人航空機の飛行に関する規制概要 3) 無人航空機の飛行形態の分類(カテゴリーⅠ~Ⅲ)
各カテゴリーに「レベル」が追記され、カテゴリーとレベルの関連性、およびレベル3.5飛行の位置づけに関する注意書きが追加されました。これにより、複雑化する飛行形態の分類がより体系的に理解できるようになり、運航者が自身の運用がどのレベルに該当するかを正確に判断するための指針が提供されました。
- 3.1.1 航空法に関する一般知識 (3) 航空機の運航ルール等 3) 航空機の飛行高度
新版では、150m以下での飛行が許容される航空機の範囲として、「これらの者の依頼により捜索又は救助を行う航空機」および「人又は家屋のない地域及び広い水面の上空」という記述が追加されました。これは、捜索救助活動の多様化や、低リスク環境での有人航空機の運用実態を反映したものであり、ドローン運航者にとって、有人機との空域共用における理解を深める上で重要です。
- 3.1.2 航空法に関する各論 (2) 規制対象となる飛行の空域及び方法(特定飛行)の補足事項等 2) 規制対象となる飛行の方法 b. 目視による常時監視
新版では、「安全な飛行を行うためにバッテリー残量を確認する目的等で無人航空機から一時的に目を離し、モニターを確認する等は目視飛行の範囲内となる」という具体的な解釈が追記されました。これは、実運用におけるモニター確認の必要性を考慮し、それが「目視外飛行」とはみなされないという明確な指針を与えるものであり、運航者の実務上の負担を軽減しつつ、安全を確保するための現実的な解釈を示しています。
- 3.1.2 航空法に関する各論 (2) 規制対象となる飛行の空域及び方法(特定飛行)の補足事項等 2) 規制対象となる飛行の方法 d. 催し場所上空
新版では、飛行許可・承認の有無にかかわらず、飛行予定経路下で想定外の「多数の者の集合する催し」が開催された場合の具体的な対応義務(直ちに飛行停止、経路変更、安全な場所への着陸等)が追記されました。また、「ドローンショー」「花火大会」「マラソン」「街頭パレード」「選挙等における屋外演説会」が「該当する例」として追加され、実務上の判断基準が大幅に拡充されました。これは、予期せぬ状況変化に対する運航者の責任を明確にし、公共の安全を最優先する姿勢を強調するものです。
- 3.1.2 航空法に関する各論 (2) 規制対象となる飛行の空域及び方法(特定飛行)の補足事項等 2) 規制対象となる飛行の方法 f. 物件の投下
新版では、「対象物件を地表等に落下させることなく地上の人員に受け渡す行為や輸送した物件を地表に置く行為」が物件投下に含まれないことが追記されました。これは、特定の物流や作業におけるドローンの利用(例:荷物の手渡し、設置作業)が「物件投下」の規制対象外であることを明確にし、新たなビジネスモデルの展開を支援する意図が読み取れます。
- 3.1.2 航空法に関する各論 (3) 無人航空機の操縦者等の義務 1) 無人航空機の操縦者が遵守する必要がある運航ルール f. 事故等の場合の措置 ア) 事故の場合の措置
新版では、事故の定義の前にあった詳細な説明文が、定義の後に「なお、無人航空機の事故とは、次の事態をいう。」という形で移動されました。これは、構成の整理と、定義の明確化を図るための変更です。
- 3.1.2 航空法に関する各論 (5) 無人航空機操縦者技能証明制度 1) 制度概要
旧版の飛行の方法の限定の表が「1. 昼間(日中)飛行・目視内飛行 2. 夜間飛行 3. 目視外飛行」であったのに対し、新版では「1. 昼間(日中)飛行・目視内飛行 2. 昼間(日中)飛行 3. 目視内飛行」に変更されました。この変更は、技能証明の限定が、より基本的な飛行方法(昼間、目視内)に焦点を当て、夜間飛行や目視外飛行は限定解除の対象として別途扱われるという制度の趣旨を反映しています。
- 4.4.2 機体の主たる構成要素 (1) 無人航空機で使われる電気・電子用語
「電圧」の求め方が旧版の「抵抗(R)×電流(A)」から、新版では「セル当たりの電圧(V)×セル数 ※電圧降下は抵抗(Ω)×電流(A)」へと、より専門的かつ実用的な内容に修正されました。また、「メモリ効果」の定義がより詳しく追記されました。これらの変更は、バッテリー管理に関する操縦者の知識を深め、より安全な運用を促すための技術的な詳細化です。さらに、旧版で「一等」の項目であったリチウムポリマーバッテリーの電気的トラブルに関する記述が、新版では一般的な知識項目へ移動し、より多くの操縦者に共有すべき重要情報として位置づけられました。
- 4.4.3 送信機 (3) 送信機の操縦と機能
ピッチ、ロール、ヨーの定義が、旧版の「機首を上下する回転」などから、新版では「機体の左右を軸とした回転」といった、より技術的・専門的な表現に修正されました。また、飛行機のスロットル操作が「前後移動」から「速度変化」に、エルロンやラダー操作が「機体の左右旋回」を伴うことが追記されました。これらの修正は、操縦の物理的原理をより正確に理解させることを目的としています。
- 4.4.4 機体の動力源 (3) エンジン
エンジン機の説明において、旧版の「ローター」が新版では「ローター又はプロペラ」に、エンジン種類に「ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ジェットエンジン」が追記され、より網羅的な記述になりました。これは、多様な動力源を持つ無人航空機への対応を反映しています。
- 4.4.5 物件投下のために装備される機器
旧版の「搭載位置や対象物」が新版では「搭載方法」に変更され、より具体的な運用手順への言及が強化されました。また、農薬散布に関する注意点が「第三者や第三者の土地に農薬が誤って散布しないように配慮しなければならない」から「農薬を対象区域外に飛散させないよう注意しなければならない」に簡略化されました。これは、より一般的な飛散防止の義務に焦点を当てたものと解釈できます。
- 4.6.1 電動機における整備・点検・保管・交換・廃棄 (2) リチウムポリマーバッテリーの保管方法
旧版では「4.6.1 電動機における整備・点検・保管・交換・廃棄」のサブセクションであった「(2) リチウムポリマーバッテリーの保管方法」が、新版では「4.6.2 リチウムポリマーバッテリーの保管方法」として独立し、番号が変更されました。これは、バッテリーの重要性が高まる中で、その管理に関する記述をより目立つように配置したと推測されます。
- 5.1.2 運航時の点検及び確認事項 (1) 安全運航のためのプロセスと点検項目
「飛行中の点検」が「飛行中の監視」に、また「確認する」が「継続的に確認する」に変更され、より積極的かつ継続的な監視の必要性が強調されました。これは、飛行中の状況変化への対応能力の重要性を高めるための修正です。また、運航終了後の確認事項が「飛行日誌の作成」から「飛行日誌を作成したか」に変更され、確認行為であることがより明確になりました。
- 5.1.2 運航時の点検及び確認事項 (3) ガソリンエンジンで駆動する機体の注意事項
旧版の「運搬することが必要である」が新版では「運搬しなければならない」に修正され、義務性が強調されました。これは、危険物であるガソリンの運搬におけるコンプライアンスの厳格化を示唆しています。
- 5.2.2 手動操縦及び自動操縦 (1) 手動操縦・自動操縦の特徴とメリット
手動操縦の「制御が求められる」という表現が「行われることもある」に修正され、手動操縦の必要性がやや緩和されました。これは、自動操縦技術の進歩に伴い、手動操縦が必須となる場面が限定的になりつつある現状を反映している可能性があります。
- 5.2.2 手動操縦及び自動操縦 (4) 自動操縦と手動操縦の切り替えにおける操作上の注意と対応
新版では、「鳥などの野生動物からの妨害を想定した防御等、手動操縦への切り替えを速やかに行える等の体制を整えておくこと」という記述が追記されました。これは、飛行中の予期せぬ外部要因(野生動物)に対するリスク管理の重要性を強調するものです。
- 5.2.2 手動操縦及び自動操縦 (5) カテゴリーⅢ飛行において追加となる自動操縦の注意点〔一等〕
旧版の「地上の第三者を考慮した緊急着陸地点」が、新版では「地上の第三者の立入りが少ないこと等の条件を考慮した緊急着陸地点」に修正されました。これは、第三者上空飛行が前提となるカテゴリーⅢ飛行において、緊急着陸地点の選定基準がより厳密になり、第三者への影響を最小限に抑えるための配慮が強化されたことを示しています。また、旧版の「鳥などの野生動物からの妨害」に関する記述が削除され、より広範な「第三者がいる地上の状況が想定と異なる場合」への対応が求められるようになりました。これは、特定の脅威への対処から、より包括的な状況認識と対応能力への要求へとシフトしたことを意味します。
- 5.2.3 緊急時の対応 (3) カテゴリーⅢ飛行において追加となる緊急時対応手順〔一等〕
旧版の「その飛行形態に応じてリスクの分析及び評価を行い、その結果に基づくリスク軽減策を講じる必要がある」に、新版では「第三者の立入りがあるものと認識して」が追記されました。これは、カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価が、常に第三者の存在を前提としたものであることを明確に強調し、そのリスク評価の厳格性を一層高めるものです。
- 5.4.1 CRM (Crew Resource Management)
CRMが「マネジメント手法」から「概念」に変更され、TEMの目的として「UAS(望ましくない航空機の状態)」に陥らないこと、およびUASに至った場合でも事故に至らないこと、という具体的な目標が追記されました。また、CRMスキルが「チームの体制構築」から「チームワーク」に、5つのスキルとして明確化されました。これらの変更は、CRMが単なる手法に留まらず、より広範な安全文化と意思決定の基盤となるべき概念として位置づけられたことを示しています。
- 6.1.6 カテゴリーⅢ飛行におけるリスク評価〔一等〕
旧版の「厳格に安全を確保する必要がある」が、新版では「より一層の安全に配慮すべきである」に修正されました。これは、表現のニュアンスの違いであり、義務の厳格性は維持しつつも、より包括的な安全配慮の精神を強調したものと考えられます。
- 6.2.1 気象の重要性及び情報源 (1) 無人航空機における気象の重要性
旧版の「無人航空機の飛行状況や他の物件との安全な距離が確保されていることを目視で確認できない雲中や濃霧等の気象状態では無人航空機を飛行させてはならないことを意味する」という記述から「無人航空機の」が削除され、より簡潔な表現になりました。
- 6.3.1 飛行機 (3) リスク軽減策を踏まえた運航の計画の立案の例〔一等〕
飛行機の旋回に関する記述で、旧版の「旋回半径」が新版では「最大バンク角」に修正されました。これは、飛行機の旋回性能を評価する上で、より直接的な操縦パラメータである「バンク角」に焦点を当てた、技術的な正確性を高める修正です。
- 6.4.1 夜間飛行 (1) 夜間飛行の運航
新版では、「機体に搭載されたビジョンセンサーが夜間に対応していない場合は、衝突回避・姿勢安定などの安全機能が使用できない可能性があることに注意が必要である」という注意点が追記されました。これは、夜間飛行における技術的な制約と、それに対する操縦者の認識の重要性を強調するものです。
- 6.4.2 目視外飛行 (3) 目視外飛行におけるリスク軽減策を踏まえた運航の計画の立案の例〔一等〕
補助者を配置しない場合の飛行経路設定において、旧版の「ゴルフ場」が新版では削除されました。これは、ゴルフ場が「第三者が存在する可能性が低い場所」という定義から外れる、あるいは実運用上リスクが高いと判断されたため、より厳格な場所選定を促す意図があると考えられます。
「無人航空機の飛行の安全に関する教則」の第3版から第4版への改訂は、単なる表現の見直しに留まらず、無人航空機を取り巻く法規制環境が、技術の進歩と運用経験の蓄積に応じて、より詳細かつ厳密なリスクベースアプローチへと進化していることを明確に示しています。
「第三者及び第三者上空」の定義の厳密化、特に「落下距離」の概念の導入は、飛行計画における安全マージンの設定をより科学的かつ定量的に行うことを義務づけるものです。これは、無人航空機の運用におけるリスク評価の精度を向上させ、将来的な有人地帯での飛行(レベル4)に向けた基盤を固めるものと評価できます。
そして、新たに導入された「レベル 3.5 飛行」は、機上カメラによるリアルタイム監視を条件に、移動中の車両等の上空を一時的に横断することを可能にする画期的な変更です。これは、技術的ソリューションが人的・物理的リソースの代替となり得ることを規制当局が認めたものであり、特定の高価値な運用(例:長距離インフラ点検、都市部物流)の実現に向けた大きな一歩となります。同時に、この新たな飛行形態には「十分な補償が可能な第三者賠償責任保険」の加入が必須とされたことは、技術によるリスク軽減と同時に、残存するリスクに対する財務的担保を強化するという、規制当局の慎重かつバランスの取れたアプローチを明確に示しています。
行政処分等基準における「点数制」の導入は、違反行為に対する処分の透明性と客観性を飛躍的に向上させます。これにより、運航者は自身のコンプライアンス状況をより明確に把握し、軽微な違反に対する早期の是正行動を促される一方で、常習的または重大な違反に対する厳格な対応が担保されます。これは、無人航空機産業全体の安全文化の醸成に寄与するものです。
これらの改訂は、無人航空機が「空の産業革命」として社会に深く統合されていく過程において、規制が単なる障壁ではなく、安全を担保しつつ新たな運用を可能にするための「道しるべ」としての役割を強化していることを示しています。運航者および関連事業者は、これらの変更点を正確に理解し、自身の運用体制、技術投資、およびリスク管理戦略を継続的に見直すことが不可欠です。特に、新たな技術的要件(機上カメラ、上空用携帯電話プラン)への対応、そして厳格化されたリスク評価と保険要件への適合は、今後の事業展開における重要課題となることが考えらえます。
特に、「捜索又は救助のための特例」の適用範囲の拡大と具体化は、ドローンが災害対応において多角的な役割を担うことを規制当局が積極的に容認し、その社会実装を後押しする姿勢を示しています。これにより、緊急時におけるドローンの活用がより円滑かつ広範に行われることが期待されます。
「無人航空機の飛行の安全に関する教則」(第4版) 令和7年(2025年)2月1日 【教則学習】目次