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知っておきたいUTMS・USP制度|ドローン空域管理の最新動向

2026年6月9日  2026年6月9日 

無人航空機の「空の交通整理」を担う新制度、その全体像と実務上の注意点

国土交通省が整備を進めるUTMS(無人航空機運航管理システム)。その中核を担うのが、USP(UTM Service Provider)というサービス事業者です。令和8年3月31日に審査要領が正式に制定され、制度が本格的に始動しました。

USP制度は、UTMSを運用する事業者を対象としたもので、ドローンを飛行させる運航者自身に直接適用されるものではありません。しかし、今後の低空域における空域管理の方向性を大きく左右する重要な制度です。

USPが提供するサービスには、飛行中の事故防止や地上・水上の安全確保に直結する機能が含まれています。また、ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)との連携が必須であるため、適正なサービス・機能を有すると認められた事業者のみにIDが交付される仕組みとなっています。

本稿では、ドローンを飛行させる方や事業展開を検討されている方向けに、最新の一次資料に基づき、制度の全体像と実務上のポイントをわかりやすく解説します。


UTMSとは何か

UTMS(UAS Traffic Management System:無人航空機交通管理システム)とは、無人航空機(UAS)の運航を管理するシステムの総称です。複数の無人航空機の飛行計画、飛行状況、地図情報、気象情報などを関係者間で共有し、安全で効率的な空域利用を実現するインフラとして位置づけられています。

有人航空機におけるATM(航空交通管理)に相当する仕組みであり、ドローンが増加する低空域を秩序立てて管理するためのものです。日本では国土交通省が主導し、「初期的なUTMS」として段階的に導入が進められています。TMとATCの詳しい関係については、当ブログの「無人航空機の運航管理システム UTM」記事をあわせてご覧ください。

現時点では、飛行計画(DIPS2.0での通報)の調整・共有を中心とした機能が実装されており、将来的にはリアルタイム位置情報の共有や衝突回避支援など、より高度な機能への拡張が想定されています。


USPとは何か

USP(UTM Service Provider)とは、UTMSのサービスを実際に提供する民間事業者のことです。運航者(ドローンオペレーター)は、USPのプラットフォームを通じて飛行計画の申請・調整・共有などを行います。

国土交通省による審査を経て一定の要件を満たした事業者のみにIDが付与される仕組みとなっており、わかりやすく言えば「ドローンの飛行計画を安全に調整・管理するためのプラットフォームを提供する事業者」といえます。


なぜUTMS・USPが必要なのか

無人航空機を安全に飛行させるためには、機体性能や操縦技能の確保に加え、空の交通を適切に管理することが不可欠です。特に、ドローンの普及とレベル4飛行(有人地帯での目視外飛行)の解禁により、同一空域を複数の無人航空機が同時に利用するケースが増加しています。

これにより、以下の課題が顕在化してきました。

  • 機体同士の接近・衝突リスク:複数のドローンが近接した空域で飛行する場合、互いの位置を把握できないと衝突の危険があります。(→ 有人・無人統合運航と衝突回避技術
  • 有人機(ドクターヘリ等)との混在リスク:ドクターヘリをはじめとする低空を飛行する有人機と、無人機が同じ空域を使う局面が増えており、接触リスクへの対応が急務となっています。
  • 調整手続きの非効率さ:現状のDIPS2.0での飛行計画通報では、重複がある場合の調整が電話・メールベースで非効率なままとなっています。

これらの課題に対応するため、UTMSの活用が注目されています。UTMSは、飛行計画や飛行状況、地図・気象情報などを関係者間で共有することで、飛行前の計画調整を効率化し、運航者の手続き負担を軽減します。

将来的には、リアルタイムでの位置情報共有により、無人航空機同士の衝突防止や有人機との接触リスク低減も期待されています。

なお、無人航空機の運航形態は多様であり、技術・環境の変化も速いことから、UTMSは実情に合わせて段階的に導入される方針です。現在は「初期的なUTMS」として制度整備が進められています。

ポイント UTMSは、「飛行前の計画調整の効率化」「将来的なリアルタイム管理」により、安全性と効率性の両立を目指すインフラです。現在はまず飛行計画の調整・共有機能から本格運用が開始されています。

💡 ポイント
UTMSは、「飛行前の計画調整の効率化」「将来的なリアルタイム管理」により、安全性と効率性の両立を目指すインフラです。現在はまず飛行計画の調整・共有機能から本格運用が開始されています。


UTMSの段階的導入ロードマップ(Step 1〜3)

UTMSは以下の3ステップで段階的に整備される計画です。現在はStep 2への移行期にあります。

ステップ 状態 主な内容
Step 1(現状) 稼働中 DIPSが飛行計画の重複を検知し運航者へ通知。調整はメール等で運航者が自力で実施
Step 2 初期
(2025年度実施)
移行中 認定USPが調整支援を担う。審査要領・手順ガイドが整備されこの段階から本格制度運用が開始
Step 2 中後期 準備中 調整支援に加え、ドローンの動態把握・USP間での共有・経路逸脱時のアラートを追加
Step 3 将来構想 飛行場所の空域を指定し、飛行前〜飛行後まで一貫した低高度空域管理を実現。ATM(有人機管制)・UATM(空飛ぶクルマ管制)との情報連携も含む

Step 3では、飛行前の調整に加え、飛行中のモニタリングや衝突回避まで対応した本格的な交通管理体制が構築される予定です。


UTMSを使うとどう変わるか(運航者視点)

1. 飛行計画の通報

  • USP利用時:USPのサービスにログインして飛行計画を通報するだけで完了。DIPSへの個別通報は不要となり、空域制限情報もUSPから提供されるため確認の手間が大幅に削減されます。
  • USP未利用時:DIPS2.0に個別にログインして通報する必要があります。

2. 飛行計画の重複が発生した場合

  • USP利用時:DIPSが重複を検知するとUSPに通知され、USP同士(またはUSPと運航者)で調整を行います。調整完了後、修正した計画を通報します。
  • USP未利用時:運航者自身が調整掲示板で相手と連絡を取り、調整後に再通報する必要があります。

3. NOTAMの発行手続き

USPを利用する場合、許可・承認取得後の地方航空局への飛行内容通知書送付をUSPが代行します(許可・承認申請自体は運航者が行います)。

項目 UTMSを使わない場合 UTMSを使う場合
飛行計画の調整 関係者間で個別に連絡・確認 システム上で自動的に重複を検出・調整
他機の位置把握 困難(目視または個別連絡のみ) 共有情報をもとにリアルタイムで把握(将来実装)
有人機との共存 NOTAMや個別確認に依存
有人機の動向も共有され、リスクを低減(将来実装)
NOTAMの通知 運航者自身が地方航空局へ送付 USPが通知書送付を代行
手続きの負担 手動でDIPS2.0等に通報が必要 USP経由でまとめて対応可能、負担軽減


USPへのID付与制度と審査の概要

令和8年3月31日に審査要領(001994441)が制定され、申請受付が開始されました。USPとして認定されるためには、国土交通省が定める審査要領に基づく審査に合格する必要があります。

審査の流れ

  1. 審査要領・申請様式の確認(国交省ウェブサイト)
  2. 申請書・適合説明資料・宣言書の作成
  3. 国土交通省航空局 無人航空機安全課へメール提出
  4. 書類審査(一次審査)
  5. 検証環境での接続試験(二次審査)
  6. ID付与・サービス開始

IDの有効期間は3年間で、更新は有効期限の1か月前までに申請が必要です。

⚠️ 注意
申請書類の様式はPDF形式で国交省ウェブサイトに掲載されています。制度は発展途上にあるため、最新情報は必ず公式サイト(https://www.mlit.go.jp/koku/usp.html)で確認してください。

USP事業者になるための要件詳細

① 一般要件(組織・運営面)

要件項目 主な内容
事業計画 UTMサービス継続に必要な経営の安定性・経営資源の確保
設備 UTMサービスに必要なシステムの保守・維持管理方法の文書化
組織・人員 最高責任者の選任、各部署への権限・責任の明確化
業務実施方法 緊急時対応を含む具体的な手順書の整備
教育・訓練 新規・定期・臨時の訓練カリキュラムの文書化
委託管理 委託先の選定基準・監査方法の文書化
記録管理 運用記録の3年間保存義務
内部監査 業務実施組織から独立した組織による監査制度の整備
秘密保持 個人情報の匿名管理、他USPとの情報交換ルールの明確化
セキュリティ アクセス制御・暗号化・多要素認証・冗長構成の確保

② 機能要件(システム面)

USPは以下の3機能を必ず備える必要があります。

  1. 飛行前調整機能(戦略的衝突回避) 
    飛行計画の通報支援、空域制限との競合チェック・通知、DIPSが検知した重複の調整支援、異なるUSP間での競合飛行計画の特定と解決手法の整備、NOTAMに係る地方航空局への通知代行などが求められます。
  2. 空域制限情報の提供機能
    管制空域・制限表面・飛行禁止エリア・緊急用務空域などの情報を、4Dボリューム(高さ・長さ・幅・期間)の形式で運航者に提供します。飛行前・飛行中の両方での情報更新が必要で、システム障害に備えた冗長構成も義務付けられています。
  3. 飛行データ等の作成・記録機能
    通報された飛行計画・調整のやり取り・管制機関とのやり取り・飛行軌道データ・提供した空域制限情報などをUTC時間でタイムスタンプを付けて記録し、3年間保存します。

③ 報告義務

種別 対象 報告期限
不安全事象・法令違反疑い 運航者の緊急事態、衝突・接近、航空法違反疑い 発見から原則72時間以内
定期報告 不安全事象以外の事案、内部監査結果・是正措置 毎年4月末日まで(前年度分)

まとめ

令和8年3月31日に制定された審査要領をはじめとする資料は、USP制度が実際に運用段階に入ったことを示す重要なマイルストーンです。

主なポイント

  • UTMS:無人航空機の運航管理を行う空の交通管理インフラ
  • USP:UTMSのサービスを提供する認定事業者(ID有効期間3年)
  • 運航者メリット:飛行計画調整の効率化、NOTAM通知代行など手続き負担の大幅軽減
  • USPの要件:組織体制、システム機能、セキュリティ、記録管理、報告体制の整備
  • 将来展望:Step 3ではリアルタイム管理や有人機・空飛ぶクルマとの連携を実現

レベル3以上の飛行、特にBVLOSや有人地帯上空飛行を事業として検討されている方は、UTMS・USPの動向を継続的に注視することをおすすめします。制度は段階的に進展しますので、国土交通省公式ページで最新情報を必ず確認してください。

📎 公式情報源
国土交通省「USP制度」ページ:https://www.mlit.go.jp/koku/usp.html
※ 本記事の情報は国土交通省航空局が公開している資料をもとに作成しています。制度の詳細・最新情報は必ず公式情報を確認してください。

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ノーマン飛行研究会
2015年 首相官邸ドローン事件があった年、トイドローンを手にして以来ドローンと関わっています。JUIDAの無人航空機安全運航管理者、操縦技能証明とドローン検定協会の無人航空従事者試験1級 を取得しております。無線関連の第1級陸上特殊無線技士も取得しております。 できるだけ正確に学んだことを綴って行きたいのですが、もし間違いなどありましたらご指摘いただけると嬉しいです。 このサイトはリンクフリーです。報告の必要ありません。リンクして頂けると喜びます。
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